真空パックと共に安らかに。

美唄のB級グルメと言えば「焼き鳥」だと思いますが、美唄市内の焼き鳥屋さんの多くは「もつ」と「せい」しか取り扱っていないお店が多いです。私は数年前までは美唄の職業訓練校で講師として働いていたことがあり、仕事帰りに焼き鳥を買って帰ることが多かったです。色んなお店の焼き鳥を食べましたが、特に気に入ったお店が見つかってからは、ずっとそこに行くようになりました。

そこは、優しそうなおじちゃんとパーキンソン病を抱えたおばちゃんが切り盛りしている小さなお店で、常連客らしき人がカウンターに何人か座っていることはあっても、奥の小上りに人が座っていることはほとんど見かけなかったです。ここで「もつ5本」と「かけそば」を食べて帰ることもありましたが、ほとんどは真空パックにしてもらって持ち帰っていました。

今の仕事に変わってからは、美唄に行く機会も少なくなり、このお店に行くのは年に1度か2度ぐらいになってしまいました。たまに近くを通る時は「もうやってないかな?」とお店の様子を見に行くこともありましたが、おばちゃんの体調が悪くなり、お店は長い間休業していた時期があったりして、いつ営業しているのかもよくわからなくなっていました。

個展をスタートした11月15日に、ちょっと寄ってみたところ、赤ちょうちんが光っているのが見えました。

久々に暖簾をくぐりました。昭和にタイプスリップしたような店内は以前と変わらなかったんですが、少し違和感を覚えました。

いつも、炭の前で焼き鳥を焼いていたおじちゃんの姿はなく、以前にも増してスロースピードになったおばちゃんが焼いているのです。

おばちゃんは私の顔を覚えていないようで、焼き鳥を持ち帰りしようと思って注文しました。

 

みっちぃ「もつ20本、真空にしてくれる?」

おばちゃん「機械壊れちゃって、(空気を)吸わなくなったの。父さんが連れて行っちゃったんだ。」

 

この時、おじちゃんが居ない理由が分かりました。

 

みっちぃ「あっ、そうなの。それじゃ、5本食べて行くから。あと、かけそばちょうだい。」

カウンターには私の他に誰も居なくて、奥の小上りに数人のお客さんがいて、注文を取りに来ないことにイライラしているような感じでした。

 

みっちぃ「お客さん待ってるみたいだから、手伝うよ。注文聞いてこようか?」

おばちゃん「いいの。(向こうから)来るから。」(←オイオイ)

そうはいっても、焼肉屋のホール経験があるので、お腹を空かせたお客さんの気持ちはよく分かるので、オーダーを取って、飲み物を出すのを手伝いました。

 

その間にも、おばちゃんの焼き鳥をひっくり返すスピードが間に合わず、だんだんと焦げていきました。

一応、焦げたものは横によけて、焦げていないものを私に5本出してくれましたが、かけそばを作っている様子はなかったので「かけそばのことは忘れちゃったかな?」と内心思っていました。

 

奥のお客さんも落ち着いたので、その話を切り出してみました。

 

みっちぃ「おじちゃん、今日いないの?」

おばちゃん「父さん、死んじゃったんだよ。」

みっちぃ「え、そうだったの...いつ頃?」

おばちゃん「今年の5月(だったかな?)に。」

みっちぃ「おばちゃん一人でお店大変でしょう?」

おばちゃん「な~んも大変じゃないよ。一日何人かしか来ないし、お父さんは(焼き鳥を)焼くだけだったから。」

焼き鳥の下ごしらえやサイドメニューを作るのが、おばちゃんの仕事で、おじちゃんは焼き鳥を焼くのが仕事だったから、おばちゃんの体調が悪くなったときは、お店を休むことになったけど、おばちゃん一人でもお店は切り盛りできるんだろう。いや、できてないけどね。(笑)

 

いつの間に作ったのか分からないけど、ちゃんと「かけそば」も出てきて、多分、来ることはないと思ったけど、おばちゃんに個展の話をしました。

 

みっちぃ「アルテピアッツァで24日まで個展をやってるから、暇なときあったら見に来て。」

 

以前よりも病気が進行していて、歩くスピードも動きもスローになってきたけれど、おばちゃんを元気にしてあげたいな~と思いました。

 

みっちぃ「来週、何人かで来てもいいかな?」

おばちゃん「いいよ。人数決まったら電話ちょうだい。」

 

 

そんなやりとりをして、この日は店を後にしました。

次の日曜日、ひょっとしたらおばちゃんが見に来てくれるかもしれないと思って、ちょっと期待していましたが、おばちゃんの姿はなかったです。

 

次の月曜日(11月17日)からは、私はギャラリーに行けなかったので、えびすの仲間たちが交代でお留守番に行ってくれたのですが、おばちゃんが足を運んでくれたそうです。

市内とはいっても、あの歩くスピードでどうやってアルテピアッツァまで足を運んだのかな? バスかな? ひょっとしたらタクシーで行ったのかな? そんな気持ちになりながらも、来てくれたことにとても感激しました。

 

そして、休館日の翌日の11月19日(水)北海道新聞の空知版に大きく記事が載りました。この日から、来場者数はかなり伸びたようです。

そして、私の名刺を持って帰ったようで、おばちゃんから直接電話が入ったのです。

 

おばちゃん「この前見に行ってきたよ。新聞にも載ってたね。」

みっちぃ「ありがとう。土曜日、みんなで行くからよろしくね。」

聞き取れないか細い声でしたが、喜んでくれたようで、私も嬉しかったです。

 

そして、打ち上げ当日。普段は化粧っ気のないおばちゃんがちょっぴりめかし込んで私たちを迎えてくれました。

しかし、普段来ない人数に厨房内はパニックで、案の定おばちゃん一人の手に追えず、なぜかKIKUが厨房に入り、手伝っているんです。(笑)

超美人なので薄くモザイクかけておきますが、すぐにでも小料理屋開けるほど似合っています。

KIKU

お店を貸し切った方がおばちゃんの負担がないかな~と思って、貸し切ったつもりでしたが、いつもの常連さんがカウンターで私たちの様子を見ていました。

打ち上げ

そして、おばちゃんの焼き鳥。ちょっと焦げたりしてるけど、ここの焼き鳥は最高です。

美唄焼き鳥

打ち上げ終了後、これからも美味しい焼き鳥を真空パックで持ち帰ってもらえるよう、おばちゃんに真空パックの機械をプレゼントしました。

おばちゃんは突然のプレゼントに驚いていたようでした。新しい機械の使い方がわかるかな?とやや不安要素もありますが、おばちゃんの美味しい焼き鳥を家庭でも再現できるよう、取扱いに慣れてくれるよう願うばかりです。

真空パックを連れてこの世を去ったおじちゃん。

そして、優しいおばちゃん。

人生色々あるけれど、また新しい風が吹くといいね。

止まない雨はないし、向きが変わらない風はない。